白龍亭・結城郊外図（八犬士具足）
■ 目次 >> 地図（補図） >> 結城郊外図（1999年頃～／2025年 2月再開）
▼結城周辺
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* この地図は、2012年にサイトデザインを大幅変更した時に一旦公開中止。その後、内容を改訂するつもりでグダグダと何も進まないまま 13年が経過。結局、地図は改訂せずにそのまま。文章のみ多少の追記あり。
【八犬士、全員集合】
八犬士が全員揃うのは、全十巻の岩波文庫でいえば、第七巻の中頃。
「嗚呼時なるかな、至れるかな、八犬ここに具足して、八行の玉、聯串の功、丶大の宿望虚しからぬを、看官もうち微笑るべく、作者は二十餘年の腹稿、その機を發く小團圓、いはでもしるき一朝の、筆ならざるを思ふべし」
（第百二十七囘）
里見季基をはじめとする結城合戦の戦死者たちを弔う丶大法師の結城法要。親兵衛を除く七犬士が参列。ところがこれを快く思わない結城城下逸疋寺の住持徳用らに襲撃され、丶大法師危機一髪。そこへ蟇田退治を終えて結城法要に向かっていた親兵衛が神がかり的に登場して救われた。
そこへそれぞれの敵を倒した他犬士がやってきて、ついに八犬士が勢ぞろい。場所は左右川（まてがは）橋のたもと。
* 馬琴はここで「小団円」と書いている。大団円は知っていたが、小団円を知ったのはこの文章が初。……似たような例として、大晦日（年末）は誰でも知っているが、ただの晦日（月末）はあまり知られた言葉ではない。なんか「大」がついた言葉だけが生き残って、そうでない言葉は忘れられるのね。
作者も感慨無量だっただろうが、読者にとっても思いを深くする場面である。
左右川は流れが変わってしまってすでにない、と馬琴は書いている。
「今は這川あることなければ、看官訝り思ふもあらん」
（第百二十七囘）
川の名の由来は左右分岐から。二流のうち一流は滸我へ流れ、もう一流は仁連木、境を経て利根川に合流するとあるので、上図ではそのように描いた。
現在、右側の川と似たような道筋に仁連川があるが、街道と交叉する橋は上図での能化院と諸川宿の間。この橋のところから東仁連川と西仁連川に分岐するので左右川とイメージは近い。下総国結城郡と猿島郡を分けるのはこの川らしい。ということで、丶大と八犬士の逃走ルート上、能化院までは結城郡、諸川宿は猿島郡になる。能化院で結城家の重臣を待つ、という八犬伝の地理設定（距離の記述）は正確である。
逸疋寺や能化院は、亭主の持つ地図上では該当する位置にそれらしき寺院が存在しない。結城家の菩提寺ということになっているが、現実の菩提寺はまったく別の位置にある。
なお、結城から武井宿を経て、その後に諸川から関宿に向かうこの道は「日光東往還」という街道。
五街道のひとつ日光街道（今の国道 4号）に並行する脇道で、今は茨城県道・千葉県道17号線。YouTubeにこの県道を走る自動車の前面展望動画があって、この区間を見たが、真っ平な関東平野を実感する風景だった。
